ある村に一匹の❝おひつじ❞がいました。
そのおひつじの毛には特別な力があり、みんなその毛を手に入れたいと思っていました。
通常一年に一度ひつじは毛を刈りとられるのですが、
このおひつじの毛だけは三年に一度しか刈り取れません。
そのためおひつじの毛を刈る時期が近づくと、
その毛を手に入れようとみんなが優しさをみせて近づいてくるようになっていました。
おひつじは数度の毛刈りを超え、優しさというものが信用できなくなっていきました。
なかには1年目から優しくしてくれるものもいましたが、
おひつじの性格はすっかりひねくれてしまっていました。
「どうせみんな毛のためだろう。近づいてきてもまたいなくなるんだろう」
そう思うことしかできなくなっていたのでした。
明日は毛刈りの日。
おひつじに近づく人が差し出してきたのは真っ赤なりんごでした。
それを受け取らずおひつじは森の中へ走って逃げました。
その森の中で見つけたのは黄金に輝くりんごの木でした。
「りんごくらい自分でとれる……」