あるところに男の子がいました。
その男の子はいつも家の中でひとりでした。
窓はありますが外は見えません。
明かりがはいってくるだけで、外の景色は見えません。
扉には鍵がかかっているので男の子は外の世界を知らないのです。
部屋の中はシンプルで余計なものはほとんどありませんでしたが、
男の子の姿が全部うつるほどの大きな鏡がそこにはありました。
男の子は鏡の前で毎日のほとんどを過ごします。
昔、読み聞かせてもらっていた大好きな絵本がありました。
いまの男の子と同じくらいの双子の男の子のお話です。
今日も男の子は鏡の中の男の子に対して話しかけます。
「ぼくたちって世界一素敵な❝ふたご❞だよね」
『そうだよ。今日はきみにプレゼントがあるんだ』
鏡の世界の男の子は黄金のりんごを差し出しました。