あるところに❝てんびん❞がありました。
そのてんびんは重さをはかるわけではありません。
片方になにかをのせると傾くのですが、必ずのせたほうに傾くわけではありませんでした。
少女がてんびんに猫をのせました。
その猫は少女が大好きな猫でした。
寿命で昨晩息をひきとったのでした。
てんびんは傾きました。
猫をのせたほうが上になり、猫には白い翼が授けられると、
少女の頬にキスをして空へと飛んでいきました。
ある男がてんびんにのせられました。
その男は凶悪な事件を起こし罰を受ける前に自ら命をたちました。
てんびんは傾きました。
男をのせたほうが下になり、男は黒い粒子となり散りました。
ある老婆が紙にくるまれた丸い物体をてんびんにのせました。
てんびんが傾きかけたとき、紙の中から黄金のりんごがてんびんの上を転がりました。