ある村に弓の達人である❝いて❞がいました。
その者が狙ったものには必ず矢が命中するのです。
いては特段取り柄があるわけではありませんでした。
ある森でみつけた立派な木の枝を使い、丁寧に弓矢を作り上げました。
いての想いが届き、その弓矢を持ったいてに特別な力が宿ったのでした。
その力を頼り、たくさんの人々が押し寄せました。
いては優しかったのでできる限りの願いを叶えようとしました。
そんないての優しさに反し、人々の願いはだんだん自分よがりな汚いものになっていきました。
いては特別なはずでしたが、そのおかげで大切なものを失いました。
飛び立つ鳥を狙って弓をひきました。
そのむこうにキラッと光るものが目に移り、矢を放ちました。
矢は鳥ではなく、黄金に輝くりんごをうち落としました。
いては矢を抜くために近づきました。
「とてもきれいだ……」