多肉植物とひとことに言っても、その特性、形態、成長のスピード、適した環境はその種類によって様々です。
ここでは、代表的な三種類についてそれぞれ解説していきます。
ベンケイソウ科エケベリア属
中央アメリカやメキシコを中心に約140の原産地が存在する。
いずれにしても、乾燥地帯のものが多い。
エケベリア属は、春と秋に成長する「春秋型」。春と秋は水の吸い上げもよく、ぐんぐん成長していく。この時期は適度な水やりをしてよく日に当てることで多肉植物特有のプリっと締まったフォルムになる。成長期に日当たりが足りないとヒョロヒョロと伸びてしまい、葉も落ちやすくなる。(この状態を徒長という。)
春秋とは逆に、夏と冬は休眠状態になるため水やりは控え目のほうが良い。
種類による差はあるが、成長は早い方。
春秋型のため、この時期には適宜水やりを行う。
乾燥地帯のものであるため、毎日の水やりは厳禁。(目安として表面の土が乾いてから水やりをする。)
【夏】 断水。夕方の涼しくなった時間帯に少量与えてもよい。
【冬】 氷点下にならない地域であれば少量の潅水は可能。氷点下になる地域の場合、水やりをすると凍結してしまうので断水する。
エケベリア属は日光浴が大好き。成長期の間は日当たりの良い屋外での栽培が最適。
購入した株をすぐに直射日光に当てると葉が日焼けしてしまうこともあるので、半日陰から徐々に慣らしていくと良い。
【夏】 夏の直射日光では焼けてしまったり溶けてしまうことがあるので遮光をする。遮光率は置き場所の日当たりに左右されるが、20%~40%程度で夏越し可能。必要以上に遮光率を上げると徒長してしまうため注意。
【冬】 関東等冬でも晴れる日が多い地域では直射日光に当てると良く紅葉して大変綺麗な姿を見せてくれる。東北や北陸等の雪や曇天の多い地域の場合、日当たりが望めないため、とにかく冬を乗り切ることを最優先とする。春に再び日光に当てる際日焼けに注意する。
増やし方は「胴切り」「葉挿し」「カキコ」「実生」があるが、ここでは「葉挿し」について取り上げたい。
エケベリア属のみならずベンケイソウ科の多肉植物の多くで「葉挿し」が可能。その方法はいたって簡単で、植え替える際にポロっと取れたり何かのはずみで取れてしまった葉を土の上に置いておくだけ。一枚の葉から根と芽が出てきて成長していく。季節は成長期である春秋が最適。
注意点は根がないため水を吸い上げることができないこと。そのため根が出ていない間は水やりをせず、根がしっかり出てきたら水やりをするようにする。
根と芽が出てきた葉挿し。
土の上に置かなくても発芽、発根する。
葉挿しで発芽したものを土に植えるとすくすくと成長する。
適当な長さにカット後放置して発根させる「挿し木」という方法もある。
ツルボラン亜科ハオルチア属
美しい透明感の窓を持つもの、硬い鱗のようなフォルムのものなど形は様々だが、その多くの種が南アフリカのケープ地方に分布している。
一部の種はトランスバール、ナミビア、スワジランド、ナタールまで分布することが知られている。
岩の隙間や背の高い草の根元など、砂礫質の地表で明るい日陰を好む。
ハオルチア属は、春と秋に成長する「春秋型」。生育適温目安は10℃~30℃。
毎年春か秋に植え替えて根を整理してやることで子を多く出しよりきれいに成長する。
春秋とは逆に、夏と冬は休眠状態になるため水やりは控え目のほうが良い。特に冬は凍結に注意する。
成長期にググッと成長する。小苗のうちは成長の遅いものが多い。
原産地では数日雨に当たりっぱなしになることもあるため、水は大好きで水やりをするとプリっとするが、毎日の水やりは厳禁。
根が完全に乾燥することを嫌うため、適度な水やりの間隔が大切。
【夏】 断水して風通しの良い日陰で夏越しする。夕方の涼しくなった時間帯に少量与えてもよい。
【冬】 氷点下になる地域の場合、水やりをすると耐寒性が下がる。一度でも凍結してしまうと窓が白く濁るので断水する。
自生地でも日陰に生息しているため、直射日光は苦手。
通年遮光をすると綺麗に成長する。
なるべく直射日光の当たらない、風通しの良い場所が最適。
【夏】 夏の直射日光ではすぐに蒸れてしまうため50~60%遮光する。風通しに注意する。徒長する場合は遮光率を落とす。
【冬】 霜の当たらない軒下や室内に取り込むほうが無難。日に当てない分潅水は控える。冬場のみ、植物育成用のLEDライトで栽培するのも一つの手だ。
増やし方は「胴切り」「葉挿し」「カキコ」「実生」。
ハオルチア属の葉挿しは難易度が高いため、主に胴切りまたはカキコで行う。
胴切りする場合は清潔なテグスを葉の間に入れ、一気に引くと綺麗に切断できる。胴切り後、頭の方は切り口を軽く乾かした後湿らせた用土に植え付ける。胴体の方は切り口を乾かして放置すると子株が生えてくるのでそのまま育成する。
カキコは、刃物を使用しても良いが、清潔な手で優しくひねるようにしてもぎ取ると、不必要に親株を傷つけたり、刃物からのウイルス感染の心配がない。もぎ取った後は胴切り後の頭の方と同様の管理でよい。
ピンクのLEDライトで育成されたハオルチア。
カキコ苗の植え付け。
胴切り後の子吹き。大きくなったら切り離して植え付ける。
ハマミズナ科リトープス属
南アフリカ・ナミビアに生息する。
極度に乾燥した地域で岩の割れ目などに自生している。
11月から4月頃にかけて成長する冬型の多肉植物。開花も秋。
植え替えは成長期前に行うとその後の生育が良い。
成長は比較的ゆっくりな多肉植物。
秋から春にかけて、適宜水やりを行う。植えている鉢によっては雨ざらしで育てることも可能。
乾燥地帯のものであるため、毎日の水やりは厳禁。水分過多になると球体が割れてしまうこともある。
【夏】 断水。夕方の涼しくなった時間帯に極少量与えてもよい。
【冬】 耐寒性の高い植物ではあるが秋、春よりは潅水量を減らす。
冬に脱皮をするが、二重脱皮を防ぐために脱皮期間中も水は控えめに。暖房のついた室内等に取り込むのは厳禁。
日光に当てることでがっしりした健康な株に育てることができる。室内では日光量が不足するので日当たりの良い屋外での栽培が最適。
細長く伸びてしまう場合は日光が足りないサイン。
【夏】 夏の直射日光では焼けてしまったり溶けてしまうことがあるので遮光をする。遮光率は置き場所の日当たりに左右されるが、20%~40%程度で夏越し可能。必要以上に遮光率を上げると徒長してしまうため注意。夏の通風は必須。
【冬】 冬の間日に当てないとほとんどの確率で春以降の成長に支障をきたすため、可能な限り日に当てる。遮光は10月頃から不要。
増やし方として「株分け」「実生」がある。
株分けは群生した株を切り分けて根出しをする。根出しの方法は、茎を切り詰めて湿った土に挿し、発根させるといったもの。この場合、親株子株ともに失敗のリスクがあるため実生で増やすのが一般的。
実生の方法は、鹿沼土、赤玉土、燻炭等を混ぜた用土の上に肥料分のない清潔な表土(芝の目土、川砂等)を敷き熱湯消毒したものに均等に種子を蒔き、腰水で管理する。種蒔き適期は9月下旬~10月下旬頃。室内で管理する場合も窓際で日に当てて育て、一年後に初回の植え替えを実施する。
脱皮中のリトープス。写真のように分頭することもある。
発芽直後のベビーリトープス。うまく育てるにはコツがいる。
種から育てたリトープスの初脱皮。小さいながらもしっかり模様がある。